父の急死で情緒不安定に…娘の登園拒否と向き合った母親の相談事例|喪失感と育児不安が重なったときの対処法

生活していると、うれしいこともあれば、心が追いつかない出来事が重なることもあります。
大切な人との突然の別れ。そして、子どもの登園拒否。
今回ご紹介するのは、福岡県にお住まいの40代女性・Tさんからのご相談です。
お父さまを急に亡くされた直後から、毎日涙が止まらず、食欲不振や不眠など心身の不調が続いていました。
ちょうどその頃、5歳離れた次女が幼稚園に入園。しかし、強い登園拒否や給食拒否、お友達と遊べない様子が見られ、園から呼び出されることも増えていきます。
「家では普通なのに、なぜ登園できないんだろう」
「早く元気にならないと」
喪失感と育児の不安が同時に押し寄せ、一人で抱え込んでしまっていたTさん。
父の死による情緒不安定と、娘の登園拒否という二つの問題が重なったとき、心はどのように揺れ動いたのか。
今回は、そんなTさんの事例をお伝えします。


投稿者プロフィール

- よりびと
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■待機時間:月・火・木・金の10時30分~16時30分(水曜日は不定期)
※祝日は基本お休みです
※待機日時が変更されるケースがありますので、詳しくは待機カレンダーを確認ください。
■年齢:40代
■ キャッチコピー:わたしの経験を誰かの力に。「大丈夫だよ」に根拠を持たせます。
■ 得意なテーマ
– 不安障害、パニック障害、適応障害の症状について
– 不登校、登校拒否の相談。(保護者さん、お子さんどちらからでも大丈夫です。)
– 育児のお悩み全般
– 介護負担感
– 不妊治療の辛さ
– 家族との関係
– 人との関わり方
■ 聴き方・スタイル
– ご相談者様のペースに合わせて聴きます
– 話がまとまっていなくても大丈夫
– 否定せず、穏やかに受け止めます
– ご希望があればアドバイスします
– 我慢せず素直に感情を表してください
■ 経験
– 社会福祉士 精神保健福祉士 保育士取得。
– 回復期リハビリテーション病棟と介護保険病棟の医療ソーシャルワーカーとして5年、市役所障がい福祉課障がい認定調査員として5年の経験あります。
– 現在、保育士として骨盤サロンにて託児スタッフをしています。子育て支援センター臨時スタッフ経験あります。
– 不安障害、パニック障害、適応障害の経験あります。現在完治。
– アルツハイマー型認知症になった祖母の在宅介護経験、家族として施設入所支援経験があります。
– 自身の娘が聴覚過敏。HSP。不登校、登校拒否傾向にて心療内科通院中。不登校に対する学校とのやり取り経験あります。
– 自身も高校中退、大学入学資格検定試験を経験。心療内科通院・カウンセリング経験あります。
– 6年間の不妊治療を経験しました。体外受精にて妊娠。帝王切開にて出産。
–不妊治療ピアサポーター研修講義受講。
– 転勤帯同10年経験。
– 幼稚園、小学校で絵本の読み聞かせ6年目。
– アクセスバーズプラクティショナー取得。
■ 大切にしていること
– 自分の言葉で語ってもらえるように質問を工夫します。
– 素直に気持ちを表現していただけるようにします。
– 泣いても怒っても受け止めます。
– 調べられることがあれば調べます。
■ 人柄・ユニークポイント
– 好きなもの:宮古島の海/ 柴犬 / ウミガメ/耳そうじ/そのぎ茶/娘と美術館に行くこと/ピアノを弾くこと
– よく言われる性格:社交的。明るい。話しやすい。面倒見がよい。でも繊細。嫌いなことは努力しない(笑)。
– ちょっとしたこだわり:家の中の芳香剤をアロマオイルにしている。ヨーグルトメーカーでヨーグルトを作る。焼き芋も家で作ります。
– 聴き手としての密かな強み:医療ソーシャルワーカーとして染みついた面接技法。自分の経験。たくさんの辛い経験をしたからこそ、大丈夫という言葉に重りを付けることができます。
■ メッセージ
プロフィールをみていただいてありがとうございます。
一人で悩まず一緒に考えさせてくださいね。少しでも明日に変化が出るように、少しでも気持ちが軽くなるようにお手伝いします。お話しできることを楽しみにしております。
目次
- ○ 父の急死で心が追いつかない…涙が止まらない毎日と、幼稚園からの呼び出し
- ・「家では普通」なのに通えない…理由が分からない不安が積み上がる
- ・悲しみと育児の悩みが同時に来たとき、心は一気に容量オーバーになる
- ・ひとりで抱え込まないために、まず「今の状態」を言葉にして整理していく
- ○ 「私が元気にならなきゃ」なのに体がついてこない…悲しみの中で回る毎日
- ・悲しみは「終わらせるもの」じゃなくて、波みたいに揺れ戻るもの
- ・「休めない」が続くと、心も体も警報モードのままになる
- ・「元気にならなきゃ」が強いほど、実は回復が遠回りになることもある
- ○ 「話していいんだ」と思えた瞬間から、抱え方が変わり始めた
- ・気持ちを言葉にするだけで、頭の中の「ぐるぐる」が止まりやすくなる
- ・「できること/難しいこと」を分けたら、次女への対応が具体的になった
- ・「頼っていい」を自分に許したら、夫との関わり方も変えられた
- ○ 「ひとりで抱えなくていい」から現実が動き出した…幼稚園の配慮と、家族で進める選択
- ・園とつながったことで、次女の困りごとが「見える化」されていった
- ・夫と一緒に動くと決めたら、家族のチーム感が戻ってきた
- ・課題が残っていても大丈夫。頼れる場所があると、次の波を乗り越えやすい
- ○ 読者へのメッセージ
父の急死で心が追いつかない…涙が止まらない毎日と、幼稚園からの呼び出し
福岡県にお住まいの40代女性・Tさんは、電話でご相談くださいました。きっかけは、お父さまの突然の死。療養中で「すぐに命に関わる病気ではない」と思っていた矢先、容体が急変し、急死してしまったそうです。
その日から、毎日涙が出てしまい、疲労感が抜けず、食欲も落ち、不眠も続くようになりました。頭では「日常に戻らなきゃ」と分かっていても、気持ちが追いつかない。そんな状態のまま、子育ては待ってくれません。
さらに同じ時期、5歳離れた次女が幼稚園へ入園。ところが登園拒否が強く、行けたとしても一切笑わず、お友達とうまく遊べない、給食拒否があるなど、園から指摘が続きました。給食介助のために呼び出される回数も増え、「家では普通なのに、なんで幼稚園だとこうなるの?」と、Tさんの不安は大きくなっていきます。
夫は10歳ほど年上で自営業。園の行事には一緒に参加してくれるものの、日常の育児は忙しさもあって積極的に参加できないことが多いとのこと。実姉が手助けしてくれる一方で、実母は夫(Tさんから見て父)の死去で落ち込みが激しく、頼りづらくなっていました。
悲しみと不安が同時に押し寄せ、「早く立ち直らないと」と自分に言い聞かせるほど、心はどんどん苦しくなっていったのです。
「家では普通」なのに通えない…理由が分からない不安が積み上がる
Tさんがいちばんしんどいと話していたのは、「原因が分からないこと」でした。
家では次女は大きな問題があるように見えない。笑顔もあるし、親子の会話もできる。なのに幼稚園では、笑わない、給食を食べない、お友達と遊べない。登園拒否も強い。ここがつながらないから、Tさんの頭の中はずっとぐるぐるしてしまいます。
「私の関わり方が悪いのかな」
「家で甘やかしすぎた?」
「もしかして何か発達の問題があるの?」
そんなふうに可能性を考えるほど、答えが出ないまま不安だけが増えていく。しかも園から呼び出しがあると、心の準備ができていないまま現実を突きつけられるようで、さらに消耗してしまいます。
Tさんは、悲しみの最中でも「母親としてちゃんとしなきゃ」と自分を奮い立たせていました。
でも、気持ちが追いつかないときに無理をすると、心にも体にも負担がかかります。涙が出る、眠れない、食欲がない…こういうサインが出ているときは、踏ん張り続けるほど空回りしやすいんですよね。
そしてもう一つ、見えない負担になりやすいのが「周りの目」です。
「幼稚園に迷惑をかけたくない」
「他のママはできているのに」
そんな気持ちがあると、余計に自分を責めてしまいがち。Tさんも、気づかないうちに“ひとり反省会”が止まらなくなっていました。
悲しみと育児の悩みが同時に来たとき、心は一気に容量オーバーになる
Tさんの状況は、つらい出来事が「順番に」来たのではなく、「同時に」重なったことがポイントでした。
お父さまの急死による強い喪失感。そこに、次女の登園拒否と園からの指摘。さらに夫は忙しく、実母も落ち込みが強く、頼りづらい。支える側のTさんが、支えを受け取りにくい環境でもありました。
こういうとき、人は気合いで乗り切ろうとしがちです。
「早く元気にならないと」
「私がしっかりしないと」
Tさんの頭の中にも、まさにこの言葉が繰り返し浮かんでいました。けれど、悲しみって“努力で早送り”できないんですよね。無理に明るくしようとすると、反動でドッと落ちたり、涙が止まらなくなったりします。
さらに、心が疲れていると、子どもの不安にも敏感になります。
子どもは言葉で説明できないぶん、行動や表情でサインを出します。次女の場合、それが「登園拒否」「給食拒否」「笑わない」「遊べない」という形で出ていた可能性があります。もちろん原因は一つとは限りません。環境の変化、人見知り、緊張、集団が苦手、体調、感覚の特性…いろいろ絡み合うことがあります。
だからこそ、ここで大事になるのは「お母さんが悪い」と結論づけないこと。
Tさんは十分頑張ってきています。むしろ、悲しみを抱えたまま、日常を回しながら、園にも対応している。その時点でかなり踏ん張っているんです。
問題は、Tさんの努力不足じゃなくて、抱えている荷物が重すぎたこと。重い荷物をひとりで持ち続ければ、誰でも限界が来ます。
ひとりで抱え込まないために、まず「今の状態」を言葉にして整理していく
Tさんは「一人で悩んでしまう」と話していました。
頼りたい気持ちはあるのに、「あまり人に頼ってはいけない」と思ってきた。だからつらくても飲み込んでしまう。そんなクセが、しんどさをさらに大きくしていました。
ここで最初にやったのは、“正しい答え探し”ではなく、今の気持ちと状況をいったん全部テーブルに出すことでした。
悲しみ、不安、疲労感、眠れなさ、食欲のなさ。次女の園での様子。夫の状況。実姉のサポート。実母の落ち込み。
散らかったままだと、脳内がずっと緊急事態になってしまうので、「何が起きていて、何が一番しんどいのか」を言葉にして整理していきます。
そのうえで、次女については「できていること/難しいこと」を分けて考えました。
家ではどうか、園ではどうか。行けない日と行ける日の違いはあるか。給食の何が嫌なのか。先生やお友達との関わりはどうか。
こうやって分解すると、「なんで?」の霧が少しずつ晴れてきます。原因が一つに決められなくても、「どこに相談すると前に進みやすいか」は見えてくるからです。
Tさんには、次女の問題を抱え込まないために、相談する先や人の選び方を提案しました。園の先生との話し合い、必要なら発達検査、療育機関など、次女に合う支援を探す道筋を作る。
そしてTさん自身の落ち込みについては、適切な医療機関に継続して受診しながら、気持ちを吐き出せる場所や人を“近くに作る”ことも大切にしました。気分が落ち込みそうなときは連絡していい、と伝えることで、「ひとりで耐える」以外の選択肢を増やしていきます。
実際、最初は泣きながら話していたTさんの声が、少しずつ明るくなっていきました。
最後にTさんが言った「少しずつ進んでいこうと思います。」という言葉は、がんばり過ぎていた肩の力が、少し抜けたサインでもありました。
解決は一気にじゃなくていい。まずは抱え方を変える。そこから現実も動きやすくなっていきます。
「私が元気にならなきゃ」なのに体がついてこない…悲しみの中で回る毎日
Tさんの中でいちばん強かったのは、お父さまを失った悲しみでした。急な別れのあと、涙が勝手に出てきてしまい、眠れない日が増え、食欲も落ち、体はずっと重たいまま。頭では「子どもたちのために、早く元気を取り戻さなきゃ」と分かっているのに、心も体も言うことを聞いてくれませんでした。
しかもそのタイミングで、幼稚園からは次女のことで呼び出しが続きます。行事には夫も来てくれるけれど、日々の育児は忙しさもあってTさんが中心。実姉が助けてくれるとはいえ、いつも頼り切れるわけではないし、実母は落ち込みが強く、前みたいに甘えづらい。
悲しみを抱えたまま、生活を回して、園に対応して、家事をして…気づけばTさんは「休む」ってことが分からなくなっていました。休めない自分を責めてしまう日もあって、「私、ちゃんとできてないのかも」と自己否定が顔を出す。こうして心の余裕が削られていくと、ちょっとした出来事でも不安が増幅しやすくなります。
Tさんが抱えていたのは、出来事そのものだけじゃなく、“立ち直らなきゃ”というプレッシャーでもありました。
悲しみは「終わらせるもの」じゃなくて、波みたいに揺れ戻るもの
身近な人を亡くしたあとって、気持ちが一直線に回復していくイメージを持ちやすいんですが、実際は波みたいに揺れます。
昨日は少し落ち着いていたのに、今日は朝から涙が止まらない。急に胸がぎゅっと苦しくなる。ふとした匂い、テレビの言葉、季節の行事…そういう小さなきっかけで、気持ちが引き戻されることもあります。
Tさんも、「もう大丈夫だと思ったのに、また泣いてしまう」と話していました。ここで多くの人がやりがちなのが、泣いた自分を責めることです。
「いつまで引きずってるんだろう」
「母親なんだから、しっかりしなきゃ」
こういう言葉で自分を追い込むほど、悲しみは余計に居場所を失って、心の中で暴れやすくなります。
大事なのは、泣くこと自体を“ダメなこと”にしないこと。涙は心の自然な反応です。むしろ、涙が出るほど大切な存在だったという証拠でもあります。
「今日は波が高い日なんだな」くらいに受け止められると、気持ちが少し楽になります。悲しみを消そうとするより、波が来たときに溺れない工夫を増やす。Tさんに必要だったのは、まさにそこでした。
「休めない」が続くと、心も体も警報モードのままになる
Tさんは不眠や食欲不振、疲労感を抱えていました。こういう状態が続くと、心はもちろん、体もずっと緊張しっぱなしになります。
睡眠が浅いと回復が追いつかない。食べられないとエネルギーが不足する。疲れているのに気が張っているから、休んでいるつもりでも休めていない。いわゆる“警報モード”が切れない感じです。
この状態だと、普段なら受け流せることが刺さりやすくなります。
園からの連絡ひとつでも「また何か言われるのかな」と身構える。子どもの小さなぐずりでも「もう無理…」と限界が近く感じる。自分でもびっくりするくらい涙が出たり、イライラが増えたりすることがあります。これは性格の問題ではなく、エネルギー切れのサインです。
さらにTさんの場合、日々の育児を一人で抱えやすい状況も重なっていました。夫は必要な場面には応じてくれるけれど、日常では頼みにくい。実姉は協力してくれるけれど、いつでもというわけではない。実母は落ち込みが強く、むしろ心配が増えてしまう。
こういうとき、頑張り屋さんほど「私がやるしかない」と背負ってしまいます。でも背負い続けると、心身の電池はさらに早く減っていきます。
まずは“休めない仕組み”をほどいていく必要がありました。全部を変えるのは難しくても、休むための小さな隙間を作る。たとえば10分でも横になる、食べられそうなものを用意する、頼めるところを一つ増やす。小さくても、警報モードを緩める材料になります。
「元気にならなきゃ」が強いほど、実は回復が遠回りになることもある
Tさんの頭の中で繰り返されていた言葉が、「早く立ち直って元気にならないと」でした。これ、気持ちはすごく分かるんです。子どもがいると、止まれない。だからこそ“早く元気に”を目標にしてしまう。
でもここに落とし穴があります。元気になろうとする気持ちが強いほど、元気になれない自分を責めやすくなるんですよね。
たとえば、朝から涙が出た日。
「また泣いてる、ダメだ」
園から呼び出しがあった日。
「私のせいで迷惑かけてる」
こうやって“できていない点”ばかりに目が向くと、心はますます縮こまります。回復に必要なのは、根性よりも「余裕の回復」なのに、責めるほど余裕が減ってしまう。まさに逆方向です。
だからTさんには、目標の置き方を少し変えていく視点が必要でした。
「元気になる」ではなく、「今日の負担を1ミリ減らす」
「完璧にやる」ではなく、「一人で抱えない」
こういうふうに、達成しやすい形にしていくと、心が少し呼吸できるようになります。
Tさんが最後に口にした「少しずつ進んでいこうと思います。」は、まさに目標の置き方が変わったサインでした。急がなくていい。揺れながらでもいい。
まずは、自分にかける言葉を“追い立てる言葉”から“守る言葉”に変える。そこから、現実の動き方も変わっていきます。
「話していいんだ」と思えた瞬間から、抱え方が変わり始めた
Tさんが少し楽になれたきっかけは、何か特別な方法を手に入れたから…というより、「今の気持ちを、そのまま話していい」と感じられたことでした。
悲しみも不安も、頭の中で整理しようとすると余計にぐちゃぐちゃになります。でも、言葉にしながら一つずつ外に出していくと、「私、こんなに背負ってたんだ」と自分でも気づけるようになります。
最初のTさんは、泣きながらでした。
「早く元気にならないと」
「家では普通なのに、幼稚園だとどうして…」
言葉の端々に、“ちゃんとしなきゃ”がにじんでいて、気持ちの置き場がない感じが伝わってきました。そこで大切にしたのは、正解を急いで探すよりも、Tさんの感情が安心して出てこられるようにすること。話しやすい質問の仕方を工夫しながら、否定せずに受け止めていきました。
すると途中から、声のトーンが少しずつ変わってきたんです。泣きながらでも、「私はこうしたかった」「本当は助けてほしかった」と、自分の本音に触れられるようになっていきました。
ここから、次女のこともTさん自身のことも、“一人で抱える問題”から“整理して進める課題”へと形が変わり始めます。
気持ちを言葉にするだけで、頭の中の「ぐるぐる」が止まりやすくなる
悩みが深いときって、頭の中で同じ映像が何回も再生されるみたいになります。
園から呼び出された場面、お友達と遊べない次女の様子、給食を拒否したという話…。そこに「私が悪いのかな」「どうしたらいいの?」がくっついて、ぐるぐるが止まらない。Tさんもまさにその状態でした。
この“ぐるぐる”の厄介なところは、考えているつもりで、実は同じ場所を回っているだけになりやすいこと。
だからまずやるのは、頭の中だけで抱えるのをやめて、言葉として外に出すことです。言葉にすると、悩みが「塊」から「要素」に分かれていきます。悲しみ、疲れ、焦り、不安、孤独感…と、パーツが見えてくるんですよね。
Tさんも話していくうちに、「父のことと、娘のことが重なって、どっちも抱えきれなくなってた」と自分で言えるようになりました。
この“言える”が大事で、言えた瞬間に、気持ちって少しだけ整理されます。すると「今いちばん優先したいのはどっち?」みたいに、次の一歩を考える余地が生まれるんです。
もちろん、言葉にしたから即スッキリ!とは限りません。でも、ぐるぐるの速度が落ちるだけでも、心の負担はかなり違います。Tさんにとっては、それが「一人で抱えない」第一歩になりました。
「できること/難しいこと」を分けたら、次女への対応が具体的になった
Tさんが苦しかったポイントの一つは、次女の状態が“よく分からない”ことでした。
家では普通に見えるのに、園だと笑わない、給食を食べない、お友達と遊べない。登園拒否も強い。原因が見えないから、不安だけが膨らみやすいんですよね。
そこで一緒にやったのが、「次女ができること」と「今は難しいこと」を分けて整理することでした。
たとえば、家では安心して過ごせる。これは“できていること”。一方で、園の集団の場面だと緊張が強くなりやすい。給食も難しい。これは“難しいこと”。
こうやって分けると、「全部ダメ」じゃないって分かります。さらに、難しいことも「どの場面で」「どんな形で」出ているかが見えてくる。
すると、対応が“精神論”から“具体策”に変わります。
「頑張れ」ではなく、「園でどんな配慮があると良さそう?」
「早く慣れさせなきゃ」ではなく、「先生と情報共有して、負担を減らせないかな?」
こういう方向に話が進みやすくなります。
Tさんの場合も、園の先生への相談につながり、話し合いの場が持てるようになっていきます。次女に合ったサポートを探すために、発達検査を受ける流れも具体化していきました。
「分からない」を「調べられる」「相談できる」に変える。ここが、次女への不安を小さくする大きなポイントでした。
「頼っていい」を自分に許したら、夫との関わり方も変えられた
Tさんが途中で気づいたこととして大きかったのが、「早く誰かに相談すればよかった」「人に頼ってはいけないと思っていた」という部分でした。
これ、すごく多いんです。頑張り屋さんほど、頼る=迷惑、甘え、弱さ、みたいに感じてしまう。でも実際は、頼れるところを増やすのは“生活を守る技術”なんですよね。
Tさんは、日頃の育児を一人で抱えがちでした。夫は園の行事には参加してくれるけれど、忙しくて日常の細かい部分までは手が回らないことが多い。だからTさんの中に「結局私がやるしかない」が積み上がっていきます。
ただ、このままだとTさんの心身が持たない。そこで「次女に関することは、なるべく夫と一緒に行動する」という方向が見えてきました。
たとえば、検査の結果を夫と一緒に聞きに行く。療育機関の見学も夫と一緒に行く。
こうすると、夫の理解が進みやすくなるし、Tさんが一人で背負う量も減ります。何より「家族の課題」として共有できるようになります。Tさんにとっては、この切り替えがすごく重要でした。
もちろん、夫がすぐに100%変わるとは限りません。でも、“一人で抱えない形”を少しずつ作るだけで、Tさんの心の負担は確実に軽くなります。
最後にTさんが言った「少しずつ進んでいこうと思います。」は、まさに“抱え方が変わった”合図でした。焦らず、でも確実に、進める形が整ってきたんです。
「ひとりで抱えなくていい」から現実が動き出した…幼稚園の配慮と、家族で進める選択
Tさんの状況が大きく変わり始めたのは、「原因を一人で当てにいく」のをやめて、「相談できるところに相談する」という流れができてからでした。次女の登園拒否や給食拒否は、家庭だけで抱え込むほど不安が膨らみやすいテーマです。けれど園の先生と話し合いの場を持ち、状況を共有できたことで、Tさんの肩の荷は少しずつ下りていきます。次女は発達検査を受けることが決まり、園でも配慮を受けられるようになりました。さらに療育機関にも通えるようになり、「次に何をすればいいか」が見える状態になっていきます。
そしてもう一つ大きかったのは、Tさんが「次女に関することは夫と一緒に動く」と決めたこと。検査結果も夫と一緒に聞きに行き、療育機関の見学にも一緒に行く。そうすることで夫の理解が進み、Tさんが一人で背負う形から、家族で進める形へと変わっていきました。もちろん課題がすべて消えるわけではありません。幼稚園に通える日が増えてきた一方で、成長に伴ってトイレトレーニングが進まないなど、別の悩みも出てきています。それでもTさんの中には、「人に頼っていい」という土台が残りました。ここができると、また新しい課題が出てきても、必要以上に自分を追い詰めずに済みます。
園とつながったことで、次女の困りごとが「見える化」されていった
次女の登園拒否が続くと、どうしても家の中では「なんで?」が膨らみます。特にTさんのように、家では大きな問題がないように見える場合は、なおさらです。
でも、園の先生に相談して情報を共有し、話し合いができるようになると、困りごとが少しずつ整理されていきます。
たとえば、どの場面で表情が固くなるのか。給食のどんな点が負担なのか。お友達との距離感はどうか。先生の声かけで変化はあるか。
こういう具体的な観察が集まると、「性格のせい」「甘え」みたいな曖昧な捉え方から離れて、対応が現実的になります。
発達検査が決まったことも、Tさんにとっては大きな意味がありました。検査=ラベル付け、というイメージを持つ方もいますが、実際は「合った関わり方を見つけるための材料」になりやすいです。
分からないまま悩む時間が長いほど、不安は勝手に増えてしまうので、情報を増やして“できる工夫”に落とすことが、親の心も守ってくれます。
そして園で配慮を受けられるようになったことで、次女にとっても「がんばり過ぎなくていい場所」が少しずつ増えていきます。環境が変わると、子どもの表情や行動が変わることはよくあります。
Tさんが「やっと一歩進めた気がする」と感じられたのは、この“見える化”が進んだからでした。
夫と一緒に動くと決めたら、家族のチーム感が戻ってきた
Tさんの負担が大きくなっていた背景には、「日常の育児は私が中心」という状況がありました。夫は園の行事には参加してくれるけれど、自営業で忙しく、細かな対応までは手が回りにくい。
だからTさんの中に「結局私が抱えるしかない」が積み上がっていきます。これって、疲れが溜まるだけじゃなく、孤独感も増えやすいんですよね。
そこでTさんが選んだのが、「次女に関する大事なことは、夫と一緒に行く」というやり方でした。
検査結果を一緒に聞きに行く。療育機関の見学にも一緒に行く。園の話も共有する。
これをやると、夫の理解が“説明だけ”より一気に進みやすくなります。現場を見たり、専門家の話を直接聞いたりすることで、夫の中でも「自分ごと」になりやすいからです。
結果として、Tさんが一人で判断して背負う場面が減っていきました。夫も「必要な場面には応じてくれる」人だったので、関わり方の“入口”ができると、協力の形が作りやすかったのだと思います。
全部を完璧に分担しなくてもいいんです。ポイントは、Tさんの心身が潰れないように、家族としての動き方を整えること。
「夫と一緒に動く」と決めたことは、Tさんの自己否定を減らす効果もありました。
“私が全部やれない”ではなく、“一緒に進める”に変わる。これだけで、気持ちはかなり軽くなります。
課題が残っていても大丈夫。頼れる場所があると、次の波を乗り越えやすい
幼稚園に通える日が増えてきたとはいえ、悩みがゼロになるわけではありません。Tさんのケースでも、成長に伴ってトイレトレーニングが進まないなど、別の課題が出てきています。
でも、ここが以前と大きく違うところです。Tさんの中に「困ったら相談していい」「人に頼っていい」という感覚が残ったこと。これは本当に強い土台になります。
子育てって、ひと山越えたら終わり、ではなく、季節みたいに波が来ます。
環境が変わる、年齢が上がる、要求が増える。そのたびに新しい困りごとが出てくるのは自然なことです。だからこそ、「全部解決したら安心」ではなく、「困ったときに頼れる場所があるから大丈夫」という安心が大事になります。
Tさんには、気分の落ち込みについては適切な医療機関に継続して受診しながら、気持ちを吐き出せる相手を近くに作ることも提案していました。落ち込みが強いときほど、閉じこもってしまいやすいので、つながりを“仕組み化”しておくのはとても有効です。
また、気持ちが落ち込みそうなときは連絡していい、と伝えたことで、Tさんの中に「限界まで我慢する」以外の選択肢が増えました。
最後にTさんが持ち帰った言葉は、「人に頼っていい」。
これがあるだけで、次の波が来たときのダメージは小さくなります。完璧じゃなくていい。少しずつでいい。
Tさんが「少しずつ進んでいこうと思います」と言えたように、現実は“抱え方”が変わると動きやすくなるんです。
読者へのメッセージ
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
身近な人との別れや、子どもの登園拒否みたいに「心が追いつかない出来事」が重なると、誰でも余裕がなくなります。
涙が止まらない日があっても、眠れない夜が続いても、それは弱さじゃなくて、ちゃんと頑張ってきた証拠です。
「早く元気にならなきゃ」
「私がしっかりしないと」
そう思うほど、ひとりで抱え込んでしまいがちですが、抱えたまま踏ん張り続けると、心も体も限界が来てしまいます。
もし今、あなたも
・気持ちがぐちゃぐちゃで整理できない
・誰にも言えずに我慢している
・家では普通なのに、園や学校でうまくいかない理由が分からない
こんな状態なら、まずは「話していい場所」を確保してみてください。
私は、答えを急いで出すよりも、いま感じていることを否定せずに受け止めて、言葉にしながら一緒に整理していくことを大事にしています。
言葉になった瞬間、少し呼吸がしやすくなることって、本当にあるんですよね。
傾聴ラウンジ「ここより」では、気持ちを吐き出して、頭の中の“ぐるぐる”をほどいていくお手伝いをしています。
「こんなこと話していいのかな?」と思う内容ほど、遠慮なく持ってきてください。
ひとりで耐えるより、まず一度、話してみませんか。
あなたのペースで大丈夫です。





