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自己愛性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害の違いは?【2】

自己愛性パーソナリティ障害と境界性パーソナリティ障害の違いは?【2】

投稿者プロフィール

佐藤 公俊
佐藤 公俊心理カウンセラー
【経歴】
・キャリアカウンセラー15年
・心理カウンセラー10年
※相談件数10,000件以上

【主な相談内容】
・うつ病、パニック障害などの精神疾患との向き合い方
・周りの人には言えない恋愛相談
・仕事が長続きしない、キャリア形成に悩んでいる
・人間関係が上手くいかない

【アプローチ】
まずは話したいこと、聴いてほしいこと、頭に浮かんだことを自由にお話ください。どんな話でも否定しませんので、安心してありのままをお話くださいね。あなたの話を受け止めた上で、心の声をキャッチし一緒に向き合い、フィードバックしていきます。

目次

境界性パーソナリティ障害の特徴的な行動とその心理

境界性パーソナリティ障害の特徴的な行動とその心理

**境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder: BPD)**の人は、感情の激しい揺れや衝動的な行動、不安定な対人関係が特徴です。これらの行動は、根底にある心理的な不安や恐怖と密接に関係しています。以下に、BPDの特徴的な行動とその背景にある心理を説明します。

1.感情の激しい揺れ
行動:喜怒哀楽が激しく、気分が極端に変わる。特に怒りや悲しみを感じやすく、衝動的に行動してしまうことが多い。
心理:感情をコントロールするのが難しく、些細な出来事でも強く反応してしまう。これには、自己イメージの不安定さや他者との関係に対する不安が影響している。

2.不安定な対人関係
行動:人間関係が極端に依存的かつ短命。相手を理想化し、急に憎んだり拒絶したりする「分裂的」な思考が見られることもある。
心理:見捨てられることへの強い恐怖が根底にあり、相手が離れることを防ぐために過度な依存を示したり、突然相手を遠ざけるような行動に出ることがある。

3.見捨てられ不安
行動:周囲の人に強く依存し、少しでも見捨てられる可能性を感じると激しい不安や絶望感を抱き、過剰な行動に出ることがある。
心理:幼少期の経験やトラウマに基づく「見捨てられ不安」が強く、自分が大切にされていないと感じると極端な反応を示す。

4.衝動的な行動
行動:衝動的に浪費や過食、危険な行動を取ることがあり、場合によっては自傷行為に走ることもある。
心理:強いストレスや不安を一時的に和らげるために、衝動的な行動に出る。自己を破壊する行動は、自己価値の低さや感情を処理する力の欠如が関係している。

5.自己イメージの不安定さ
行動:自分が誰であるか、どんな人間であるかという自己像が非常に揺らぎやすく、状況や他者の反応によって自己評価が大きく変わる。
心理:自分に対する確固たる自信がなく、他者からのフィードバックに強く依存しているため、自己評価が不安定になりやすい。

6.自傷行為や自殺念慮
行動:強い感情の揺れや見捨てられ不安を抱え、自傷行為や自殺を考えることがある。
心理:絶望感や孤独感に耐えられず、感情の苦痛から逃れるための方法として自己破壊的な行動に走ることがある。

7.現実感の喪失
行動:強いストレスや不安を感じると、現実感を失い、自分が現実から切り離されたように感じることがある(離人感)。
心理:強い精神的な苦痛やトラウマによって、感情的に耐えられない状況から自分を守るための防衛機制として現れる。

8.極端な理想化と失望
行動:誰かを理想的な存在として持ち上げ、わずかな失望や相手の欠点が見えると一気に憎むようになる。
心理:自分の内面の不安や価値の不安定さを埋めるために他者に過度な期待を寄せ、期待が裏切られたと感じると強い感情的反発が起こる。

BPDを持つ人々は、感情的に不安定であり、その根底には強い不安や孤独感が存在します。適切な治療やサポートを受けることで、感情のコントロールや対人関係の安定を目指すことができます。

自己愛性と境界性の違い:自尊心と他者への影響

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と境界性パーソナリティ障害(BPD)は、どちらも対人関係において問題を引き起こしやすいパーソナリティ障害ですが、それぞれの障害には自尊心のあり方と他者への影響において顕著な違いがあります。

1.自尊心の違い
自己愛性パーソナリティ障害(NPD): 自己愛性パーソナリティ障害の人は、過度に高い自尊心を持つ傾向があります。しかし、これは表面的なものであり、実際には脆弱で他者の賞賛や承認に強く依存しています。自分を特別だと信じ、他人からの称賛を求める一方で、批判や失敗には非常に敏感です。このため、自分の自尊心を守るために他者を攻撃したり、利用することがあります。

境界性パーソナリティ障害(BPD): 一方で、境界性パーソナリティ障害の人は、不安定で低い自尊心を持つことが多いです。自己の価値を強く疑い、他者に依存して自分の存在価値を見出そうとします。相手に強く依存し、少しでも拒絶されたり無視されたりすると、自己否定感が一気に高まり、感情が大きく揺れ動きます。この不安定な自己イメージが感情の激しい変動を引き起こします。

2.他者への影響の違い
自己愛性パーソナリティ障害(NPD): NPDの人は、他者を利用する傾向が強く、他人を自分の欲求を満たすための道具として扱うことが多いです。共感能力が低いため、他者の感情やニーズを無視し、自分を中心とした行動を取ります。このため、周囲の人々は疲弊しやすく、関係が破綻しやすいです。また、NPDの人は他者の成功や評価を脅威と感じるため、対人関係において対立や競争が生じることが少なくありません。

境界性パーソナリティ障害(BPD): BPDの人は、他者に対して極端な依存を示し、その依存がうまく満たされないと、怒りや悲しみ、拒絶感を強く表すことがあります。これにより、他者との関係は非常に不安定になり、愛情と憎しみの間で揺れることが多く、関係が劇的に変化します。また、感情のコントロールが難しく、相手を振り回してしまうことも多いため、周囲の人々も強いストレスを感じることがよくあります。

3.まとめ
NPDの人は表面的には自尊心が高く、他者を利用しがちで、賞賛を求めるが、実際には脆弱な自己を守るために他者を傷つけることが多いです。
BPDの人は自己評価が不安定で、見捨てられ不安から他者に強く依存し、感情的な揺れが激しくなりがちです。その結果、対人関係は非常に不安定で、愛と憎しみの間を行き来することが特徴です。

このように、NPDとBPDはどちらも自尊心や対人関係に問題を抱えるものの、その現れ方や他者への影響には大きな違いがあります。

治療やカウンセリングでのアプローチの違い

治療やカウンセリングでのアプローチの違い

**自己愛性パーソナリティ障害(NPD)と境界性パーソナリティ障害(BPD)**の治療やカウンセリングにおいて、アプローチにはいくつかの重要な違いがあります。どちらも対人関係や自己イメージの問題が深く関わっているため、心理療法が主な治療方法ですが、それぞれの特性に応じた対応が求められます。

1.自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の治療アプローチ
治療の課題: 自己愛性の人は、自分の問題を認めにくく、治療を自発的に求めることが少ないのが特徴です。また、批判や失敗に対する敏感さから、カウンセリングの過程で抵抗を示すことが多いです。

治療目標: 治療の目的は、まず自己の脆弱な部分を認識し、他者への共感能力を高め、より健康的な自尊心を築くことです。自己愛の防衛メカニズムを理解し、それを徐々に弱めていくプロセスが重要です。

【アプローチ方法】
認知行動療法(CBT):自己中心的な思考パターンを見直し、現実的な自己評価を促すことが目的です。特に、他者との関係性において健全な行動を促すことが焦点となります。
精神分析的アプローチ:患者の幼少期の経験や深層心理に焦点を当て、過度な自己愛の背後にある不安やトラウマを解きほぐします。
共感トレーニング:他者の感情やニーズに気づき、共感する能力を育てる訓練が行われます。

2.境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療アプローチ
治療の課題: BPDの人は感情の揺れが激しく、衝動的な行動が多いため、感情の安定化が治療の大きな課題となります。また、対人関係が不安定であり、セラピストに対する理想化や逆に拒絶的な態度を取ることがあるため、信頼関係の構築が非常に重要です。

治療目標: 感情のコントロール能力を高め、対人関係の安定を図ることが主な目標です。また、自己イメージの不安定さを改善し、衝動的な行動を抑えるための技術を学びます。

【アプローチ方法】
弁証法的行動療法(DBT):BPDの治療に最も効果的とされる方法で、感情の調整や自己破壊的行動を減らすためのスキルを学びます。また、対人関係のスキルやストレス対処法を身につけることが重視されます。
認知行動療法(CBT):衝動的な思考や行動パターンを見直し、より健康的な反応を選択できるように訓練します。
対人関係療法(IPT):対人関係の問題を改善し、安定した関係を築くためのスキルを学びます。セラピストとの関係性が治療のモデルとなることが多いです。

3.自己愛性と境界性の治療アプローチの違い
自己愛性では、自己の過剰な自尊心を緩和し、他者への共感や現実的な自己評価を促すことが焦点です。治療には自己中心的な思考パターンを緩め、他者との健全な関係を築くための共感トレーニングが重要です。
境界性では、まず感情の安定化と対人関係の改善が中心となり、弁証法的行動療法(DBT)が効果的です。自己イメージの不安定さや衝動的な行動への対応が治療の重要なポイントとなります。

それぞれの障害には異なるアプローチが必要ですが、いずれも専門家による長期的な治療が必要であり、継続的なサポートが効果を発揮します。

自己愛性・境界性パーソナリティ障害との付き合い方

自己愛性・境界性パーソナリティ障害との付き合い方

**自己愛性パーソナリティ障害(NPD)や境界性パーソナリティ障害(BPD)**を持つ人との付き合い方には、いくつかの重要なポイントがあります。これらの障害を持つ人々は、対人関係において特有の困難を抱えることが多いため、相手に対する理解や適切な対応が重要です。

1.自己愛性パーソナリティ障害(NPD)との付き合い方
過剰な称賛を避ける:NPDの人は他者からの称賛や特別な扱いを求めがちですが、過度に持ち上げるとその自己愛を強化してしまいます。無理に褒めたりせず、現実的でバランスの取れたフィードバックを心がけましょう。

境界を明確にする:NPDの人は他者を利用したり、自己中心的な行動を取ることが多いです。そのため、自分の限界や境界を明確にし、必要以上に譲歩しないように注意することが重要です。断るべきところではしっかりと断る姿勢を持つことが大切です。

共感を促す:NPDの人は共感力に欠けることが多いため、感情に配慮してもらうことが難しい場合があります。しかし、彼らに他者の視点を理解してもらうよう働きかけることで、少しずつ共感力を育てることができるかもしれません。自分の気持ちを明確に伝え、相手にも他者の感情を考えてもらう機会を与えることが大切です。

2.境界性パーソナリティ障害(BPD)との付き合い方
見捨てられ不安を理解する:BPDの人は、見捨てられることに対して強い恐怖を抱いています。相手が不安を感じているときは、安心感を与え、見捨てる意図がないことをはっきり伝えることが重要です。しかし、過度に依存されないよう、バランスを取ることも必要です。

感情的な揺れを受け止める:BPDの人は感情が激しく揺れ動くことが多いです。そのため、感情が高ぶった時には落ち着いて接し、冷静に話を聞くことが大切です。相手の感情に巻き込まれず、安定した態度を保つことで相手も少しずつ安心できます。

対立を避けない:BPDの人は対立を恐れがちですが、問題を避けることは関係を悪化させる可能性があります。相手の感情に配慮しつつ、対話を通じて問題解決を目指すことが大切です。

3.共通する付き合い方のポイント
カウンセリングのサポートを提案する:どちらの障害でも、専門家のサポートが重要です。相手が自己理解を深めたり、感情や行動をコントロールできるようになるためには、カウンセリングが有効です。適切な治療を受けることを促し、専門家の助けを求めることが大切です。

自分を守る:NPDやBPDの人との付き合いでは、こちらが疲弊してしまうことも少なくありません。自分の精神的な健康を守るためにも、無理をしないようにし、適切な距離を保つことが重要です。

4.まとめ
自己愛性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害を持つ人との付き合いは、時に難しいものですが、相手の特性を理解し、適切に対応することで、より良い関係を築くことが可能です。お互いにとって健全な境界を保ちながら、理解と共感を示すことが重要です。

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